環境に対する安全性

いっそうの環境負荷低減を目指すオリゼメート

オリゼメートは環境モニタリングを継続実施し、プロベナゾールの環境中での動態や残留実態を調査しています。その環境モニタリング調査の結果、プロベナゾールは水に関する規制基準である水質汚濁に係る「農薬登録保留基準値(500ppb)」や公共用水域等における「水質評価指針値(50ppb)を超えることはなく、人の健康に影響を及ぼすことがないことが明らかとなりました。

オリゼメートの広域散布における環境生態影響調査

福島県飯坂村の比會川流域でオリゼメート粒剤20の空中散布を行い、比會川下流の原町で合流する新田川の下流までの環境生態を調査しました(図1)。
調査の結果、水生昆虫であるカゲロウ、カワゲラ、トビゲラ、ナベフタムシおよびガガンボ等の出現総種類数や総個体数に変動が見られるものの、オリゼメート剤の明らかな影響は認められませんでした。プランクトンの動態的変化は、降雨等の物理的影響や、河川水の水質変化等による影響の方が強いことが判明しました。ヤマメ、ギギやギンブナ等の魚介類については、移動性があり限定区域での調査を行うことは困難であり、オリゼメート剤との関係を明らかにすることはできませんでした。今回の調査からは、オリゼメート剤の散布によって明らかに生態系が影響を受けたとの知見は認められず、オリゼメート剤の生態に対する影響は、気象等の自然的要因や水利的な環境条件等による物理的影響と同等であると考えられました。

図1【調査河川と調査地点の概略位置図】

オリゼメートの環境生態影響に対するリスク評価

農薬の環境生態中のリスク評価法は、段階的評価法を採用しています。
第一段階の評価は100平方キロのモデル流域を設定し、使用条件(水田の止水期間等)、剤型、物理化学的特性(環境分解性等)を反映して算出した環境中予測濃度(PEC)と、魚類、甲殻類、藻類の急性毒性値を不確実係数(魚類10、甲殻類10、藻類1)で除した値の中で最も低い値を急性影響濃度(AEC)とし、両数値の比較によりリスク評価を行います(図2)。
オリゼメート剤は空中散布等により大規模に一定期間に集中して使用される場合があることから、環境生態への影響について、上記の生態影響評価手法を用いてリスク評価を実施しました。結果オリゼメートの急性影響濃度(AEC)と環境中予測濃度(PEC)を比較するとAEC>PECとなり、オリゼメート剤は適用対象の見直しや使用規制などの、更なるリスク削減は必要ないと評価されました。

図2【農薬(既登録)に対する水生生体影響評価システム概念図】

オリゼメートの環境生態影響に対するリスク評価

オリゼメート剤の環境に対する影響については、河川水モニタリングを1991年度より全国の代表的河川を対象にして実施しています。これまでモニタリング結果から特に問題のないことが明らかとなっていますが、オリゼメート剤の環境負荷を軽減する上でさらに有効な製剤として、Dr.オリゼ箱粒剤や側条オリゼメート顆粒水和剤を発売しました。これらの剤が従来の本田施用剤に比べ散布圃場外の飛散や排水路・河川へのプロベナゾールの排出が軽減されることを田面水濃度の調査により明らかにしました。

各種オリゼメート剤の田面水中プロベナゾール濃度の推移

側条オリゼメート顆粒水和剤の田面水中濃度は、移植当日に1.3ppb(最大値)となりましたが、その後、急激に減衰し移植7日後には検出限界以下となりました。Dr.オリゼ箱粒剤は側条オリゼメート顆粒水和剤と同様に移植時に2.6ppb(最大値)となりましたが、その後は徐々に減衰し、移植60日後に検出限界以下となりました。なお、オリゼメート粒剤は散布3日後に57.4ppb(最大値)となり、散布30日後には検出されませんでした(図3)。
このことから、苗や肥料と共に土壌中に挿入施用される箱処理剤や側条施用剤は、本田剤に比べて田面水中濃度が2.3〜4.5%程度に軽減されることが判明しました。プロベナゾールの田面水中濃度が低減することにより、万が一、大量の降雨等で田面水が一気に処理区域外に排出されても、河川等への放出は減少し、環境生態への負荷はより軽減されます。

図3【各種オリゼメート剤の田面水中プロベナゾール濃度の推移】

使用製剤の変化と河川におけるプロベナゾールの残存量

岩手県農業研究センターは1998年から2000年の3年間にわたり、県内平泉町の太田川(流域面積150ha)において河川水の分析を行いました。その結果、太田川流域地域の葉いもち防除体系がオリゼメート粒剤からDr.オリゼプリンス粒剤6に切り替わったため、2000年には太田川の河川水からプロベナゾールが検出されなくなったことを明らかにしました。このことは、新開発剤の特性を利用した防除体系に変更することにより、環境負荷を低減させることができ、新防除技術の確立が可能であることを示しています(表1、2)。

表1【オリゼメート剤の使用量(1998年〜2000年平泉地区)】

表2【太田川におけるプロベナゾールの残留量(1998年〜2000年平泉地区)】

ページの先頭に戻る